日本では超高齢化社会が進み、認知症患者はこれからどんどん増加していくと言われています。
そんな超高齢化社会で、親の介護費用を捻出するために不動産を売却したいが、所有者である親が認知症であるためどうしたら良いか分からない・・・という相談をよく耳にするようになりました。
親のためであっても親が所有している不動産を家族が勝手に売却することはできません。
ではどうすれば良いのでしょうか?
そこで今回は、認知症になってしまった親の不動産を売却する方法についてお話ししていきます。
認知症の親が所有する不動産の売却方法
所有者に「意思能力」がない場合、不動産の売却はできないとされていますが、認知症の人が所有する不動産を売却するために活用できる制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度とは?
成年後見制度とは、不動産の所有者が認知症や知的障害などが理由で判断能力が十分でない場合、成年後見人が契約を結んだり財産の管理などをおこなう支援制度です。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」があり、すでに認知症により意思能力が無い場合は「法定後見制度」となります。
法定後見制度を利用するためにかかる費用
家庭裁判所に申し立てをする際の手数料や切手代・戸籍謄本の入手などの費用を合わせて1万円弱ほどが必要となります。
また、本人の判断能力を医師等により鑑定してもらう場合は、鑑定料として5~10万円前後かかるのが一般的です。
裁判所への手続きを司法書士や弁護士に依頼した場合は、別途費用が必要となります。
法定後見制度で不動産を売却する流れ
①「成年後見制度開始」の申し立て
まず、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てます。
②家庭裁判所による審理
申立書が受理されたら、家庭裁判所の調査官が申立人・本人・候補者から事情を聞き審理します。
必要がある場合は、本人の判断能力の程度を医師により鑑定します。
③法定後見人の選定
家庭裁判所が法定後見人を選定します。
申し立てから審判までは、2か月程かかるのが一般的です。
④不動産会社から査定を受けて契約
信頼できる不動産会社と売却するための媒介契約を結びます。
⑤居住用不動産は裁判所の許可を受ける
居住用不動産の売却には裁判所の許可が必要となるため、「居住用不動産処分の許可の申し立て」をおこないます。
⑥売買契約を結ぶ
家庭裁判所から許可が下りたら売買契約を結びます。
⑦決済・引渡し
必要な書類
●申立書
●申立事情説明書
●親族関係図
●本人の財産目録や資料
●本人の収支状況報告書
●後見人等候補者事情説明書
●親族の同意書
●戸籍謄本
●住民票
●登記されていないことの証明書
●診断書
認知症の親が所有する不動産を売却する際の注意点
法定後見人を申し立てる際の注意点としてあげられるのが、法定後見人は裁判所が選ぶということです。
親族等を候補者とすることは可能ですが、家庭裁判所がもっともふさわしい条件の人を選ぶため希望どおりになるとは限りません。
また、親族間でのトラブルの原因となる可能性があるので、1人で判断せずに周りの人と相談するのが良いでしょう。